問題内容:三相交流…ベクトル図と電位(電位差)
 難易度:★★★★☆(難問)
目標時間:10分

※問題は手元の問題集や電気技術者試験センターの公式サイトで確認下さい。
※以下は個人の解答例です。


【解答】
(a)
まず断線前の電流について考える。
電源側をY結線にし、線電流を {small{I_{1}}}、相電流(問題図での {small{I}})を {small{I_{1}^{~'}}} とした等価回路は図1となる。
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図1

※線間電圧が {small{V{
m ~[V]} }} のため、相電圧(Y結線の電源)はベクトル図より当然 {small{frac{V} {sqrt {mathstrut 3}}{
m ~[V]} }} となります。なぜ、相電圧が線間電圧に対して {small{frac{1} {sqrt {mathstrut 3}}}} 倍になるかは暗記ではなく、説明できるようにして下さい。


負荷側をΔ→Y変換し(図2)、その後に1相分等価回路として取り出す(図3)。
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図2

※Δ回路のインピーダンス {small{Z_{Δ}}} とそれを等価変換したY回路のインピーダンス {small{Z_{Y}}} の関係は {small{Z_{Δ}=3Z_{Y}}} となります。これも暗記ではなく、なぜこの関係式が成り立つかを理解して下さい。

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図3 1相分等価回路

※中接点 {small{{
m N}}}{small{{
m N^{'}}}} の電位は対称三相回路では、(電源と負荷が各相で等しいため)同電位となります。そのため、仮想中接線 {small{{
m N-N^{'}}}} として中接点同士を繋げても(同電位のため電流が流れず)差し支えないため、1相分等価回路はこのような回路となります。

ここまでが三相交流です。後は単純な単相回路の計算になります。三相交流のセオリーは三相交流として解くのではなく、Y-Y回路に変換し、そこから1相分等価回路を取り出し、単相回路にして解くことです。ココが三相交流回路を解く上で一番のポイントです!


図3からオームの法則により線電流 {small{I_{1}}} を求め、「線電流 {small{=sqrt {mathstrut 3}~×}} 相電流」の関係より、相電流 {small{I_{1}^{~'}}} を求める。
 {egin {eqnarray} I_{1} &=& dfrac{frac{V} {sqrt {mathstrut 3} }} {r+frac{r} {3}} = dfrac{sqrt {mathstrut 3} V} {4r} {
m ~[A]}  end{eqnarray} }

 {egin {eqnarray} I_{1}^{~'} &=& I_{1} × dfrac{1} {sqrt {mathstrut 3} } = dfrac{sqrt {mathstrut 3} V} {4r} × dfrac{1} {sqrt {mathstrut 3} }  &=& dfrac{V} {4r} {
m ~[A]}…① end{eqnarray} }


次に断線後の電流について考える。
題意より、断線後はc-a相間が単相状態になるため、等価回路は図4となる。
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図4

※図4の電流 {small{I_{2}^{~'}}} が問題図での電流 {small{I}} になります。

図4の回路の合成抵抗 {small{R}} を求め、オームの法則より電流 {small{I_{2}}} を、抵抗による分流比より電流 {small{I_{2}^{~'}}} を求める。
 {egin {eqnarray} R &=& r+ dfrac{r×(r+r)} {r+(r+r)} +r = dfrac{8r} {3} {
m ~[Ω]}  end{eqnarray} }

 {egin {eqnarray} I_{2} &=& dfrac{V} {R} = dfrac{V} {frac{8r} {3}} = dfrac{3V} {8r} {
m ~[A]} end{eqnarray} }

 {egin {eqnarray} I_{2}^{~'} &=& I_{2} × dfrac{r} {r+(r+r)} = dfrac{3V} {8r} × dfrac{r} {3r}  &=& dfrac{V} {8r} {
m ~[A]}…②  end{eqnarray} }

※断線後は単相回路となっているため、回路変換せずにそのまま単相回路計算にて電流が求められます。

①と②より、断線前後での問題図の電流 {small{I}} の大きさの倍率は、
 {egin {eqnarray} dfrac{I_{2}^{~'}} {I_{1}^{~'}} &=& dfrac{dfrac{V} {8r}} {dfrac{V} {4r}} = 0.500…(答)→(1)end{eqnarray} }

※(a)はスタンダードな三相交流の問題です。「Δ→Y変換」を行い、「1相分等価回路」を取り出し、「単相回路計算」ができれば、まず取れます。B問題では三相交流はほぼ毎年出題されているため、(a)のような問題は必ず取れる様にしましょう。


(b)
題意より、断線によって電源の線間電圧の大きさ及び位相は変化しないため、各相の電源電圧を {small{dot{V_{A}} = frac{V} {sqrt {mathstrut 3}} ~∠~0{
m ~[V]}}}{small{dot{V_{B}} = frac{V} {sqrt {mathstrut 3}} ~∠~ frac{4} {3}π{
m ~[V]}}}{small{dot{V_{C}} = frac{V} {sqrt {mathstrut 3}} ~∠~ frac{2} {3}π{
m ~[V]}}}、中接点 {small{{
m N}}} の電位を {small{0{
m ~[V]} }} とすると、断線後の等価回路は図5、ベクトル図は図6となる。
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図5

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図6

※断線したとありますが、等価回路とベクトル図は題意条件から普通の対称三相回路と変りません。

問題で問われている " ×印の両側に現れる電圧 " とは電圧(電位差)の定義である「電位と電位の差」より、図5においての端子 {small{{
m b}}} の電位と端子 {small{{
m b^{'} }}}の電位の差となる。

※断線しているため、×印と端子 {small{{
m b^{'}} }}との間には電流は流れず、抵抗 {small{r{
m ~[Ω]} }} での電圧降下は発生しません。

端子 {small{{
m b }}} の電位 {small{dot{V_{b}}}} は図5より、{small{dot{V_{b}} = {dot{V_{B}}}}} となる。
端子 {small{{
m b^{'} }}}の電位 {small{dot{V_{b}^{~'}}}}は図5より、抵抗による分圧比から {small{dot{V_{A}}}}{small{dot{V_{C}}}} の丁度真ん中になることが分かる。

故に、×印の両側に現れる電圧 {small{dot{V_{bb^{'}}}}}は、電圧(電位差)の定義より電位と電位の差であるため、
 {egin {eqnarray} {color{red}{dot{V_{bb^{'}}}}} &=& {dot{V_{b}}} - {color{blue}{dot{V_{b}^{~'}}}} = {dot{V_{B}}} - {color{blue}{dot{V_{b}^{~'}}}} {
m ~[V]}…③ end{eqnarray} }

③式をベクトル図で表すと図7となる。
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図7

※電位と電圧(電位差)は同じ {small{
m ~[V]}} という単位ですが、別物です。両者が何を表しているか明確な理解がないと、(b)は解けません。


図8より、三平方の定理から {small{1:2:sqrt {mathstrut 3} }} の比を用いて、{small{dot{V_{bb^{'}}}}}の大きさを求める。
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図8

 {egin {eqnarray} {color{red}{dot{V_{bb^{'}}}}} &=& {color{green}{V}}×dfrac{sqrt {mathstrut 3} } {2}   &fallingdotseq& 0.86603V {
m ~[V]}…(答) →(3) end{eqnarray}}
以上。

【類題】
・なし
三相交流はほぼ毎年出題されていますが、この問題の(b)はベクトル図から電位差を求めさせている問題であり、過去出題歴のない問題です。

毛色は異なりますが、断線による単相回路という視点では平成22年の問15(易問)、電位と電位差という視点では平成16年の問17(難問)がより理解を深めるには良い問題かと思います。

【ひとコト】
内容的には「なるほどな」と思わせる良問ですが、三相交流のベクトル図と電位と電位差の違いを正しく理解していないと解けない難問です。
最近の理論B問題の三相交流はオーソドックスな問題が少なくなってきているので、今後はこういった総合的な力を問う問題が増えてくるかもしれません。

理論は特に時間が足りないので、本番の試験では(a)はサクッと取り、(b)は2〜3分考えて方針が立たなければ後回しにし、他に解けそうな問題へ行くという決断も重要になってくるかと思います。



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